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2023/11/02
月刊サルバドールズ

 

月刊サルバドールズ #13

鳥井綾乃/WALK EATER 代表

 


 

 

 

「死ぬこと以外はかすり傷。」

 

Profile:

東京生まれ宇都宮育ち。「WALK EATER」代表。「馬鹿旅」と称し、全国の美味しいものを食べ歩いている。お客様にも美味しいものを楽しんでもらいたいという想いを込め、2016年4月5日に「WALK EATER」を設立。キッチンカー事業のほかイベントの出店や企画も行う。

 

 

Q1:人生において大きな影響を受けた本はありますか?また、よく人にプレゼントする本はありますか?

婦で世界一周をしていた時のことを綴った高橋歩さんの『人生の地図』という本です。著者の高橋さんは作家活動を続けながら、東京とニューヨークで自らの出版社を設立したり、東京・福島・ニューヨーク・バリ島・インド・ジャマイカでレストランバー&ゲストハウスを開店したり、インドとジャマイカで現地の貧しい子どもたちのためのフリースクールを開校したり、世界中でジャンルにとらわれない活動を展開しています。家族と一緒にキャンピングカーで世界一周をした経験もあるそうです。

以前、勤めていた会社の部長がスタッフ全員にプレゼントしてくれた本です。今も本棚に飾ってあります。写真と短い言葉で表現されていて、自分の根底にあるものがここに書かれています。何を仕事にするかではなく誰と仕事をするか、それで人生が変わるなど本の中には名言がいっぱい書いてあります。シンプルな内容ですが、短い言葉の中に深い意味が込められています。

私も後輩や会社のスタッフなど何人かにプレゼントしました。この本に限らず「名言集」が好きです。ふわっとしていて、納得していないことも名言によって「なるほど」と理解できることが多いです。本はよく読みますね。ショートストーリーが好きです。

 

 

Q2:ここ1年以内においてあなたの生活に最も良い影響を及ぼした1万円以内の買い物は何ですか?

OAKLEYのリュックです。最初は使いにくったのですが、馴染んだらとても良いです。使いやすいポジションにポケットがあるし、量も入るし。いつもリュックにいろいろ詰め込んでいるのですが「何が入っているの?」と聞かれたら「夢と希望と現実が入っている」と答えています笑。現実は支払関係のものが多いですね笑。リュックは相棒です。

 

 

Q3:自分の中では失敗したと思った出来事が後の成功につながったことがありますか?具体的に教えてください。

さにさっき話したリュックです笑。使い続けていたら相棒になりました。失敗しても「失敗した」と思うことはあまりないかな。どうにかなるでしょうって思うことにしています。ネガティブ過ぎて逆にポジティブ。 死にやしないので謝ろうとか、そんなスタンスです。事業を立ち上げ時の失敗で言えばレイアウトかな。「失敗した…」と思いました。もっと自分達らしさを出せば良かった、と。デザイナーの言うことを聞き過ぎました。

 

 

 

Q4:よく思い出したり、人生の支えとなっていたりする言葉はありますか?ことわざや誰かの言葉、あるいは自分が考えたオリジナルな言葉でも構いません。

「死ぬこと以外はかすり傷」です。

以前お付き合いしていた人が言っていました。19〜20歳くらいの時に5~6年ほど付き合っていた人です。彼は6~7年前に亡くなりました。私たちは亡くなる前に別れてしまいました。出会った時の彼は30歳。既にステージ4のガンを患っており、全身に転移していました。

彼は元々、私の母の店の常連だった方の部下です。入院したと聞いてお見舞いに行きました。ガタイの良い人で、大型バスの整備士をしていました。大きな手術で彼は48㎝も体を切りました。お見舞いに行くと彼は病室でヘラヘラと笑っていました。私はその姿を見て「親からもらった大事な体を切って、ヘラヘラと笑っているあなたが信じられない」と怒って挨拶もせずに帰りました。頑張って手術をしてくれたのはお医者さんだし、親御さんも大変な思いで手術から帰るのを待っていただろうと考えたら腹が立ち、カッとなって言ってしまいました。退院後、謝りに行ったことがきっかけでお茶飲み友達になりました。それからいろいろなことを相談して、話し相手になってもらっているうちに彼から告白されました。彼は入退院を繰り返していましたが、体力が落ちないよう入院中も体を鍛えていました。私も幾度となく手術に立ち会いました。余命宣告もされていました。それでも私は多くの時間を彼と共に過ごしました。

ふとある時、献身的に尽くしている自分、悲劇のヒロインみたいなことをしている自分に対し「違う」と思ったことがありました。依存し合っている感覚というか。そういう感覚に耐え切れなくなった私は自分から彼に別れを告げました。自分から言い出したことなのに、いろいろ考え込んでしまって。引きこもってしまった時期もありました。その引きこもりから外の世界へ連れ出してくれたのが30歳の時に結婚した元主人です。結婚したのですが、その人ありきの人生になってしまうのが無理だったので、結果的に長く続かず離婚してしまいました。

亡くなった彼は梢剛(こずえたけし)さんといいます。別れた後も交流は続き、年に2回だけお互いの誕生日にやり取りをしていました。彼はいつも私を励ましてくれました。年に2回だけの交流はしばらく続いていましたが、連絡が途絶えた時がありました。自宅療養に入っていたそうです。知り合いから亡くなったと聞いた時は言葉では言い表せないほどの感情が頭の中を駆け巡りました。彼のお葬式に参列しました。彼のお母さんとも久々に言葉を交わしました。お母さんは親戚や他の参列者に私のことを「うちの嫁です」と紹介し、親族席に座らせてくれました。結婚してなかったのに初めて「嫁です」と。付き合っている頃、子どもはできないと言われていましたが、奇跡的に彼との子どもを妊娠することができました。でも、産んであげることはできませんでした。

あとになって、お母さんからいろいろと話を聞きました。「彼は死ぬ間際まで綾乃(私)のことしか考えていなかった」と。その言葉を聞いた時、もっと早く連絡しておけば良かったと思いました。亡くなる直前に現在の事業である「WALK EATER」を立ち上げました。彼のお母さんとの約束したことがあります。親孝行してくれ、と。そして良い人を連れてきてくれてくれ、と。あなたの旦那さんを見るまで私は死ねない、と。その親孝行はまだできていません。私はいろんな意味で剛さんに支えてもらっているのかな…と思っています。

 

 

Q5:今まででお金、時間、エネルギーなど何でもよいが自分のリソースを投下して最も価値のあったものは何だと思いますか?

「WALK EATER」で大活躍しているキッチンカーです。時間もお金も体力も全部つぎ込みました。店舗でお客様を待つよりも自分からお客様の元へ行った方が良いという考えから購入しました。キッチンカー事業はコロナ前からやっています。キッチンカーを通して得られたものはたくさんありますが、お客様をはじめスタッフ、業者、仲間…かけがえのない人たちとの出会いが1番大きいです。本当にありがたいと思っています。

私は覚悟を決めるまでに時間がかかるタイプなのですが、一度腹が決まったら早いです。悩んでいる時に私の背中を押してくれたのが今、一緒に事業を行っている恩田さんです。元々、恩田さんは一人で独立する予定でした。でも「仕事を辞めて一緒にやろう」と声をかけてくれたことがきっかけで私も覚悟を決めました。

 

 

Q6:自分の中でくだらないけれどなぜか止められないクセや習慣はありますか?

猫テンテンの肉球の匂いを嗅ぐことです笑。テンテンの体臭が好きで「猫吸い」しています。猫アレルギーなので、猫吸いのあとは顔中が痒くなります。私にベッタリで、帰ると肩に乗っかってくるほどです。テンテンは捨て猫で、子猫の時に店舗の駐車場で拾ってきました。その日は土砂降りの雨が降っていて、心配で見に行ったんです。拾ったからには最後までお世話すると心に決め、人に譲る予定を断り、私が飼うことにしました。毎日一緒に寝ています。これまで犬しか飼ったことなくて、犬のように育てていたら犬みたいになってしまいました笑。散歩もできるし「待て」や「お座り」もできます。飲食業なのでテンテンを触った服は着替えてから出かけます。

 

 

Q7:ここ数年であなたの人生をよりよくしてくれた新しい考え方や行動はありますか?

「自分の正義が必ずしも相手の正義ではない」かな。人によって意見が違います。お互いの考えが違った時は相手の意見に一旦寄り添うことにしています。相手がなぜそう考えるかを考えます。あと自分をちょっと甘やかすことを覚えました。全部自分がやるのではなくて、時には誰かにやってもらうことも大切だと思えるようになりました。それまでは全部自分でやっていましたね。自分が今パンクしてしまっている状態なので、自分がやった方が早かったとしても、相手に任せるようにしています。誰かに甘えて、やってもらうことで自分自身に余裕ができて、新しいことができる。そんな感じです。そして自分がまたパンクする…そういう循環です笑。

 

 

Q8:これから新たな挑戦をしようとしている若者へ伝えておきたいアドバイスはありますか?あるいは他者からのアドバイスで無視した方が良いと思うものはありますか?

「死ぬこと以外はかすり傷」です。この日本では、大概のことで命までは取られることはありません。自分の世界を持っている人は大きく2つに分けられると思っています。1つは自分のわがままを通すだけの人。もう1つは自分の世界を広げようとしている人。私自身も後者になりたいなと思っています。自分の世界を持つことは重要ですが、わがままを通すことではありません。相手のことも考える必要があります。

何事においても「こうするべき」と言っている人の話は基本、聞きません。視野の広さは人生においてとても重要です。

 

 

Q9:ここ数年で、うまくNOと言えるようになったこと(ビジネスでもプライベートでも)はありますか?断るコツはありますか?NOと言えるようになった結果、新たに気づいたことや役に立ったことはありますか?

エスマンだからな~笑。あんまりNOとは言いませんね。その場で「できません」と言うことは少ないかな。基本的に持ち帰ります。自分の中で消化して、考えた結果「難しいですね」と言う時はあります笑。NOと言って捨てたものから花が開くこともあるかと思います。なにか実現できる方法を考えたり、アイデアを持って行ったり。考えてもダメな時は「無理です」と言うかもしれません。

 

 

Q10:行き詰まった時、考えがまとまらなかった時、集中力が途切れた時、どうしていますか? 

吸いです。テンテンに癒してもらいます。あとはご飯を食べることかな。これは姉に昔、言われました。「何か食べなさい」と。それ以来、怒ったりイライラしたりした時も何かを食べています。食に意識を飛ばすというか。寝るのは時間がもったいないと思います。普段の睡眠時間は5〜6時間くらいです。ちょっとした休暇の日に普段の睡眠よりも長く寝ちゃうと罪悪感でいっぱいになります。

 

Q11:サルバドールされたアートや芸術はありますか?単純に好きなアートや芸術でも構いません。 

楽はけっこう好きなのですが、最近は無音ですね笑。心地いいなと思った洋楽は、歌詞を和訳してそれをループさせています。例えば最近だと、レイチェル・プラッテンという女性の「Fight Song」かな。そのまま「ファイト・ソング」と訳す人もいれば「私の戦い」と訳す人もいます。

昔から自分なりの言葉で和訳する癖があります笑。母親が台湾人で、台湾語のテロップ見慣れていることも影響しているのか、英語でも分かる部分に注目してしまいます。ひとつの言葉をいくつかの意味に変換する癖があります。でもその癖のおかげで仕事で何かを伝える際、言い方を変えてこうやって言ってみようなど臨機応変に考えられるようになったので、役に立っているかもしれません。言いたいことは同じですが、表現を変えてしまうので、周囲からは優柔不断と思われることもあります。

数字が好きで。自分なりに面白い遊び方というか、独特な数字の数え方をしています。運転中も車のナンバープレートに書いてある4桁の数字を使って頭の中で遊んでいます。例えば3は1と2、6は3と3、7は5と2に分解しちゃうとか。自分で言うのもなんですが、不思議な遊び方ですよね笑。

 

 

Q12:人生のターニングポイントにおいて、あなたに大きな影響を与えた人物は誰ですか?(有名人でも誰でも構いません)または誰にサルバドールされましたか?そして誰をサルバドールしたいですか?

事では恩田さん、人生では剛さんです。恩田さんに良い意味でも悪い意味でも突き進むこと、追い込むことを教えてもらいました。新しいことに挑戦して良いんだ、って。スタッフとして手伝ってもらったことが恩田さんとの最初の出会いです。ツインリンクもてぎで開催された肉フェスのイベントに2Daysで出店しました。その時に人気投票でグランプリを獲得しました。「やればできるじゃん!」と思って、それが起業のきっかけになりました。そのイベントに出ようと言ってくれたのが恩田さんです。自分には「攻めの営業」が合っているんじゃないかと思ってキッチンカー事業を選びました。サルバドールしたいのは姉かな。仕事を頑張りすぎているので。無理しないでほしいです。

 

 

 

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