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2023/08/29
月刊サルバドールズ

 

月刊サルバドールズ #12

永井宏明/株式会社週休3日 代表取締役

 


 

 

 

「大きなビジョンとして働き方を変えていくんだという強い決断が必要です。」

 

Profile:

静岡県浜松市生まれ。印刷広告代理店営業、WEBコンサルを経て、静岡県の地域密着企業で人事・総務として10年勤務。当初、週休3日総務課長として勤務。+1日のお休みは、育児と静岡市の専門学校非常勤講師を務める。3年目から介護施設の施設長を兼任。多くの看取りをコーディネート。2007年、介護施設で週休3日制導入。2016年、株式会社週休3日を創業。2022年、プライベートの時間の使い方を応援・共感する企業を検索できる+1日マッチングを実装した「週休3日.com」をスタート。浜松市と磐田市で認知症グループホーム 今日香と明日香 を運営。ライフワークは演劇。

 

 

Q1:人生において大きな影響を受けた本はありますか?また、よく人にプレゼントする本はありますか?

生において影響を受けた本は立花隆『僕はこんな本を読んできた』です。著者の立花隆氏は「知の巨人」と言われています。大学生になる時にこの本に出会い、自分が知らない自分の視野の向こうに世界が広がっていることを知りました。
立花さんが退社をするにあたって書いたエッセイが本に載っていたので読みました。長文でしたが簡潔に自分がどうしたいかが表現されていて、次のステップに進むということが理解できました。その時からキャリアを意識し始めましたね。漠然とプロジェクトリーダーをやっていたいなと思いました。大学は県外でしたが地元の浜松市が好きだったので、卒業後は地元で働こうと考えていました。その中でどうキャリアを積むかを意識しました。
高校の時に「死への準備日記」という本を読みました。がんで亡くなった女性の記者の方の本です。がんになって自分の死と向き合う様が書かれていて。突然そういうタイミングはやってくるんだと感じました。「死」というものを意識し、高校生なりに向き合いました。今もそこで考えたことを大事にしています。私の娘にも本を教えました。

 

Q2:ここ1年以内においてあなたの生活に最も良い影響を及ぼした1万円以内の買い物は何ですか?

物ナイフです。柄もステンレスで出来ています。家事の中では料理が好きで、柄もステンレス製の包丁やまな板も持っていますが、ふとAmazonで見かけて購入し、使ってみたらとても便利でした。「大は小を兼ねる」と思っていますが、切るものに応じて切るものを変えることは理にかなっているなと思いました。家事、特に料理はやってみたら面白いですよ。出汁にこだわりがあって、ネギトロ残りを味噌汁の出汁にすると最高に美味しいです。

 

 

Q3:自分の中では失敗したと思った出来事が後の成功につながったことがありますか?具体的に教えてください。

敗したとは思わないです。結果に対して理由が存在していると思います。それには向き合いますが、必要以上にネガティブになる必要はないと考えます。私は仕事でトライアンドエラーをしたい人間で、常に新しいことにチャレンジをしたいと考えています。そのことに対してストレスを感じません。打席に立つのが重要だと思っているので。ワンアウトになっても気にしません。アウトになった理由を検証し、次に繋げれば良いと思っています。そこは大事にしていますね。

 

 

Q4:よく思い出したり、人生の支えとなっていたりする言葉はありますか?ことわざや誰かの言葉、あるいは自分が考えたオリジナルな言葉でも構いません。

分のモットーは「走りながら考える」です。若い頃、笑われていました。サッカー元日本代表監督のオシム氏がマスコミでこの言葉を使い始めたのですが、それを機に笑われなくなったような気がします。今やサッカーの領域だけでなく、ビジネスをはじめとしたすべての領域においてスピード感とトライアンドエラーを繰り返すことが必須な世の中になってきましたね。
結果を出さないといけない時、自分の気持ちを落ち着かせるために「明日からの自分がなんとかしてくれる」と考えるようにしています。例えば10日間で結果を出さなければならないとします。10日間はあっという間で、1日が終わると焦ってしまいがちです。上手くいかなかったらどうしようという気持ちになります。そんな時は「今日でやれることをやれる範囲で精一杯やるしかない」と考えるようにします。1日分の自分が10人いるイメージですね、気持ち悪いけど笑。まあまあのパワーがあり、リソースがあると思います。上手く行ったこと、いかなかったことを含めて明日の自分にバトンタッチするイメージですね。そのリセットを上手にするやり方として「明日からの自分がなんとかしてくれる」を意識しています。

 

 

Q5:今まででお金、時間、エネルギーなど何でもよいが自分のリソースを投下して最も価値のあったものは何だと思いますか?

ソースを投下して悪かったことはないと思っています。逆に最も価値があったと思うこともそんなにないかな。強いて言えば、出来るだけ人に教える立場というものを経験してみたいと思っていたので、その部分に関しては、機会を積み重ねることができて良かったし、価値を感じています。自身のアウトプットの機会になりました。アウトプットするようになるとインプットするようになります。向き合う人たちの立場になり、何が効果的を考えること自体が、自分がテーマとして扱うものの体系化になると考えます。とても効率性の高い自分自身の成長機会になっています。

 

 

Q6:自分の中でくだらないけれどなぜか止められないクセや習慣はありますか?

い頃からずっと演劇を続けています。自分で脚本を書いて演出もします。元々、演劇が好きだったので、社会人1年目の時に「ムナポケ」という団体を立ち上げました。ムナポケは浜松市で演劇公演を中心に活動する学生社会人混成チームです。社会人になったら組織の運営とマネジメントをすぐにやらないとどうしようもないと思ったんです。仕事でマネジメントを経験する頃には、僕はきっと30歳くらいになってしまう。30代から経験を積むよりは20代前半からマネジメントをやった方が良いと思いました。プロジェクトリーダーがやりたかったというのもあります。自分自身が恥をかく機会というのは非常に大事です。40代中盤になって再確認しました。歳を重ねると恥をかくのが怖くなります。そうなると結局、失敗を恐れてトライしなくなり、機会を失います。腰が重くなってしまいます。
私自身、脚本と演出と企画をやりながら1時間半ほどの即興芝居の企画もしています。その他、団体に所属している20歳の子が「コントがやりたい」と言っています。その流れで「出てくれますか?」と私にオファーがありました。恥をかくのは大事なことだし、若い子の感性や指示で何かをやることに価値があると思っているので「やらせていただきます」と回答しました笑。実際、言っていることが分からないことも多いです笑。分からないことを分からないと言ったら、大人の価値観を若い世代に押し付けているか、もしくは自分自身の感性が古くなってきている可能性があります。ロジカルなもので若い人に楯突くのは良くないと思っています。
昨年、自社に高校生を採用しました。「超チルなラッパー」というワードで有名な子で、2021年の流行語のワードにも選ばれたことがあります。現在、週休3日正社員で働いてもらっています。その子の仕事ぶりや自分の娘たちとのコミュニケーションなどを振り返って冷静に考えると、若い子から学べることってとても多いです。そのことをこの1年で痛烈に感じました。
若い子の考えを尊重した方が良いとは思っていましたが、それが確信になりました。ロジックはある意味ビジネスでも強みになりますが、ロジックでは説明がつかない若い子の価値観や考え方を無視できないと思います。むしろ尊重した方が良いです。自社で若い子(Z世代)にいろいろ教えてもらうという経営者向けのサービスを始めました。若い人に向けたビジネスを展開するにあたって、若い子の価値観や考え方を理解しようとすることがとても重要な時代になってきています。若い人は減っていきます。数学的にも若い人と接する機会は今後すごいスピードで減っていきます。その世代に接することに相当な価値があると思っています。

 

Q7:ここ数年であなたの人生をよりよくしてくれた新しい考え方や行動はありますか?

元のタレント養成スクールで俳優コースの講師をやっています。4歳〜20代が中心で、中には40~50代もいます。ここではいろいろな世代と向き合う機会があります。前職では介護施設の施設長を8年やっていました。現在も認知症グループホームの経営をやっています。生まれた直後から100歳まで、幅広い世代と接点を持てる環境での経験が、私が誰かに何かを教える際の糧となり、考え方がより豊かになっていることに繋がっています。前職の介護施設の施設長だった際、看取りの指名をもらったことがあります。1年間くらい共に過ごし、一緒にドライブをしたり、お墓を見せてもらったりしました。その方の最期もしっかり看取りました。その方から、人生とか死生観について考えるとても大きな、貴重な勉強の機会をもらったと思っています。どうしてもアウトプットしたいと思い、その体験を演劇のオリジナル脚本にし、実際に公演もしました。

 

 

 

Q8:これから新たな挑戦をしようとしている若者へ伝えておきたいアドバイスはありますか?あるいは他者からのアドバイスで無視した方が良いと思うものはありますか?

つ目はキャリアを考える上で点を線にする、線を面にすることを意識しています。1つのことを掘り下げる「選択と集中」にも価値はありますが、離れた場所に点を作ることも重要だと思います。
サッカーチームと娘のミニバスチームで少し時間をいただき指導をしています。声出しやコミュニケーションの取り方など演劇で教えていることがスポーツにも活きることがあります。演劇のノウハウを活かして教えています。これも点も線にする方法の一つです。
2つ目は「型」を大事にすることです。これまでオリジナリティを大事にしてきましたが、勉強の仕方などビジネスなど何事においても基本となる「型」は重要です。若い子は「型」を身に付けることが上手ですね。良い意味で参考にしています。オリジナリティも大事ですが、その前にしっかり「型」を身につけた方が良いです。情報はたくさんあるので、まずは何事においても「型」を確認することが大切だと思っています。

 

 

Q9:ここ数年で、うまくNOと言えるようになったこと(ビジネスでもプライベートでも)はありますか?断るコツはありますか?NOと言えるようになった結果、新たに気づいたことや役に立ったことはありますか?

い時は、知っている仲間で遊んだり飲んだりすることに参加できないと心が少し揺れました。子育てやビジネスなど優先すべきことがあるので、意図的に「NO」と言うようになりました。気がついたら、参加しなければしないでも良くなりました。久々に参加すると逆に鮮度があって刺激になります。NOと言った結果、イレギュラーな形で会うことで1回の価値が高まったと思います。

 

 

Q10:行き詰まった時、考えがまとまらなかった時、集中力が途切れた時、どうしていますか? 

めに寝て、翌日の自分にバトンを渡します。早く寝ようと思っているのに、家族から声をかけられて起こされてしまうので、そこはどうにかして欲しいかな笑。

 

 

Q11:サルバドールされたアートや芸術はありますか?単純に好きなアートや芸術でも構いません。 

劇全般です。気分転換にもなります。ナイロン100℃と言う劇団の戯曲を大学の時に演出で使用しました。この台本の後書きに「この本で上演するくらいなら余程おかしいか、将来それなりの演出ができるようになっているだろう」といったような内容が書いてありました。これは自分の大事な指針のひとつになっています。目先ではなく時間的に前の方を見て生きていけるようになりました。

昨年、仕事で福岡に行った時、福岡市美術館で行われていた特別展『藤野一友と岡上淑子』を観ました。コラージュが潔いというか、世の中をこの方なりに切り取られている様が潔く、すっきりした気分になりました。コラージュはごちゃごちゃしていると思ったが、引き算して潔く表現されているのがすごく良かったです。

 

 

Q12:人生のターニングポイントにおいて、あなたに大きな影響を与えた人物は誰ですか?(有名人でも誰でも構いません)または誰にサルバドールされましたか?そして誰をサルバドールしたいですか?

はり妻と子どもたちでしょう。10年以上深い時間の関わり方をしています。関わる時間が多いということもありますが、生きるにあたっての時間の使い方に大きく影響する存在だと思っています。一緒に過ごすことで考え方がアップデートされて、良い影響をもらっています。子育てをやっていなかったら週休3日なんて考えませんでした。タレント養成スクールの講師の話も妻が持ってきた話です。自分はこういう人間だと固定するのは良くないと思えるようなストレッチが常にできていると思います。家族の存在は大きいですね。
サルバドールしたいのは世の中です。働き方の不条理で泣いている人はたくさんいると思います。保育園に迎えに行って、学童に迎えに行って、学童は6時までなのに車が渋滞して動けない。前日に遅刻して、その日もまた遅刻で絶望感を味わう。今思えば、私もつらい思いをしたんだと思います。毎日その繰り返しで、最終的に仕事を続けるのは無理だと考えたりする人もいると思います。仕事の不条理を減らすだけで、どれだけの時間が生まれるか。どれだけプラスの意味で世の中に、そして日本に還元できるかを考えています。
週休3日で創業した理由は、前職の施設で週休3日を導入した時の体験からです。週休3日で働いている方に「週休2日に戻しますか?」と聞いてみました。ほとんどのスタッフが「もう1日働いても良いけど、このくらいにしておきます」と言いました。もしあなたが、あるサービスを受ける立場になった時「もう1日休みたいな」と考えながら働いているスタッフと「もう1日働いても良いかな」と考えながら働いているスタッフ、どちらからサービスを受けたいと思うでしょうか。ちょうど良い働き方はサービスの質の根拠になります。

働く人を確保できないと事業は継続ができません。大きなビジョンとして、働き方を変えていくんだという強い決断が必要です。その決断があれば、それに向かって必要なロードマップを描けます。手段として有効なら導入すれば良いと思います。週休3日というよりは、これからどうしたいかが重要です。人口が減少する中、生き残るために「週休3日」は有効な手段だと考えています。働き方を再定義しなければならない時が来たと感じています。

 

 

LINK:

株式会社週休3日

http://3kka.co.jp

 

MUNA-POCKET COFFEEHOUSE(ムナポケ)

https://679.jp/

 

 

 

 

 

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