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2025/07/24
月刊サルバドールズ

 

月刊サルバドールズ #24

山田 義治/有限会社ユーキャン(現スキット)創業者

 


 

 

 

「私にとってカミさんは観音様のような存在でした。

 

Profile:

1977年 松下電器産業株式会社 入社

1999年 株式会社システムソリューションセンターとちぎ (SSCT)入社

2000年 有限会社ユーキャン(現・株式会社スキット) 創業

2025年 隠居暮らし

 

Q1:人生において大きな影響を受けた本はありますか?また、よく人にプレゼントする本はありますか?

から本をプレゼントすることはしないですね。新型コロナウイルス感染拡大で外出が難しくなった時、息子に誘われ「7日間ブックカバーチャレンジ」というものに参加しました。7日間ブックカバーチャレンジとは、読書文化の普及に貢献するための取り組みです。参加方法はとても簡単で、好きな本を1日1冊7日間投稿するだけです。投稿する際には「本についての説明はなしで表紙画像だけアップ」そして「その都度FacebookとInstagramの友達を1人招待し、このチャレンジへの参加をお願いする」というルールがあります。参加したのは2020年で今から約5年前でした。その中から一部をご紹介します。

 

1冊目は『内臓とこころ(三木成夫・著)』です。著者の三木氏は養老孟司氏の先輩です。三木氏は「人間の胎児は受精から出生に至るまでに生物の進化の道筋をたどるように成長していく。受精卵は細胞分裂を繰り返しながら、両生類→爬虫類→哺乳類と形態的変化を経て、最終的に人間の姿へと成熟する」という考え方を基に生命と宇宙のリズム、身体の記憶、感情と臓器のつながりといったテーマを深く掘り下げた解剖学者・思想家です。土俵際に追い込まれた時に自己流の瞑想をしていました。当時は瞑想と聞くと胡散臭いイメージが先行するのか、なかなか口に出せない時代でした。しかし、ここ数年Googleをはじめとする米国IT企業でマインドフルネスがトレンドになっているという話題を耳にして、いろいろと勉強している最中です。その中で出会ったのが三木成夫氏の著書の数々でした。

 

次は『臨床教育と〈語り〉二宮尊徳の実践から(中桐万里子・著)』です。二宮尊徳の考え方や思想の良さを再発見した本です。現代の職場改善や人材育成に通じることも多く、以前、社員全員が改善に取り組む文化で知られている未来工業株式会社を視察した体験とも重なりました。同社は主に電気設備資材等の製造・販売を行っており「常に考える」という姿勢が現場力の源となっています。視察した際にそれを強く実感し、自社の社員にも伝えました。

二宮尊徳の話の中で「芋こじ」というものがあります。これは人の利己心や争いを和らげるためのたとえ話として有名で、彼の思想を端的に表す逸話のひとつです。「ひとつの鍋にたくさんの芋を入れて茹でると、最初は芋同士がぶつかり合って、鍋の中でガチャガチャと音を立てるが、だんだん煮えて柔らかくなるとぶつかっても傷つかず静かに落ち着いて、みんな丸くなる。」という話です。この「芋こじ」のたとえ話は、職場や学校などの小集団活動での取り組みにも応用できる考え方です。集団の中では最初、メンバー同士の意見がぶつかることもありますが、それを恐れる必要はありません。対話を重ねることで徐々に互いの理解が深まり、協力の姿勢が育まれていくと考えます。最終的に自分の意見を押し通すのではなく、全体最適を目指して互いに譲り合い、学び合う関係性へと成熟していくことが大切だと二宮尊徳は教えてくれます。

また二宮尊徳の実践には「札入れ」と呼ばれる意思決定の仕組みがありました。これは村の重要な方針を決める際に1人ひとりに札を配り、賛成や反対の意思を込めて箱に入れてもらうという、投票形式の手法です。これにより話し合いだけでは見えにくい本音や立場の違いを明確にし、全員の意思を平等に汲み取ることが可能となりました。二宮尊徳は上からの命令で人を動かすのではなく、住民自らが考え、責任を持って意思決定することを重視していました。札入れはその象徴であり、1人ひとりが社会の一員だという意識を育むという教育的な意味もありました。

 

最後は『愛と救いの観音経(瀬戸内 寂聴・著)』です。2004年7月にカミさんに誘われ、岩手県の天台寺で行われた寂聴さんの青空説法に行きました。その2年後には自社が創業期のビギナーズラックを使い果たし最初の倒産の危機に瀕しました。その頃になぜか書店で目に留まったのがこの本でした。昔の得意先がキヤノン代理店であったこともあり、その社名の由来が観音様から来ていると聞いた記憶もあって観音様に親しみを感じていました。カネもヒトも思い通りにならない苦難の日々。でも今思えばすべて身から出た錆。そんな苦しさから逃れようとしたんだと思います。親父の仏壇の水替え日課に合わせてド派手な「愛と救いの観音経」を手に経を詠んでいました。そうこうするうちにカミさんだけでなく、飼っていた猫のショコラや犬のプリンまで観音様のように感じできました。声を出して観音経を唱えていると経文のイメージが浮かんでくるような不思議な感覚に陥りましたね。大変な時でしたが、そんな思いに気づかせてくれた一冊です。

 

 

 

 

 

Q2:ここ1年以内においてあなたの生活に最も良い影響を及ぼした1万円以内の買い物は何ですか?

い物ではないのですが、昨年8月に「ミヤラジ」という地元のラジオ番組に小学4年生の孫と一緒に出演しました。ちなみに出演料は8,000円なので1万円以内です。話した内容はたわいもない日常のことでしたが、普段と違う環境で孫が堂々と話す姿に驚かされ、同時に面白さも感じました。10歳前後という年齢は世の中を理解しているようで、まだまだ分かっていないところがあります。だからこそ1番楽しく、1番魅力的な時期でもあります。井上陽水さんの『少年時代』のように幼い頃を思い出させてくれる貴重な体験となりました。私は10歳の頃に病気を発症しました。大変な時期を過ごしたこともありましたが、当時は何も分からず必死に生きていました。70歳を超えた今では様々なことを理解できるようになりましたが、精神年齢は10歳のままのような感覚で日々を過ごしています。ラジオ出演はそんな「10歳の目線」に立ち返る貴重な体験となりました。

 

 

Q3:自分の中では失敗したと思った出来事が後の成功につながったことがありますか?具体的に教えてください。

1999年に当時、勤めていた松下電器産業株式会社を退職し、株式会社システムソリューションセンターとちぎ(SSCT)に転職しました。しかし2000年8月、社内の状況が大きく変化し、私は会社を辞めることになりました。自分の意志とは無関係に道が閉ざされてしまいました。

「さて、これから何をしようか?」と考えた時に転職という選択肢もありましたが「今さらやりたいことでもない」との思いから、地域でITに関わる仕事を志すようになりました。当時、地方にもインターネットが普及し始めた頃で、私もその流れに乗り独立を決意しました。退職金は300万円ほどだったし、小中学生の子どももいたので学費の心配がありましたが、それでも独立の道を選びました。何度も潰れそうになりながらも自分が本当にやりたかったネットワーク構築という仕事に取り組みました。一時は「損をした」と思った時期もありましたが、結果として独立創業して良かったと思います。

 

 

Q4:よく思い出したり、人生の支えとなっていたりする言葉はありますか?ことわざや誰かの言葉、あるいは自分が考えたオリジナルな言葉でも構いません。

リジナルではないのですが、2つあります。ひとつは「やってみなきゃ分からん。やったことしか残らん。」です。この言葉は自社の社員にも繰り返し伝えてきました。まず行動しなければ何も始まりません。たとえ失敗しても、とにかくやってみれば必ず何かが残ります。

もうひとつは塩谷町の宮大工・小川三夫氏の「捨て育て」という考え方です。創業から5年ほどはビギナーズラックということもあり、会社は順調に進んでいました。ところが一巡して壁にぶつかりました。私は社員を育てようと繰り返し教育を行いました。しかし、誰も私の言うことを聞いてくれませんでした。「社長なのに…」という苦しさを抱えていた時、小川氏の講演を聞きに行きました。そこで耳にしたのは今の親や学校は教え過ぎている、という話でした。家大工は建て方を教えればどんどん家を作れますが、宮大工は神社や寺院などの伝統的な木造建築物を専門に手がける大工職人です。一つとして同じ建築物はないため教えて育てることができません。では宮大工はどのように育てるのか。小川氏は「弟子は教えて育てるものではない。捨て置くしかない。その代わり弟子は親方のそばにいて、黙って見て学ぶ。自分で気づき、失敗し、悩みながら本物の力をつけていく。」と話していました。「教える」には「押し付ける」という意味もあるそうです。さらに「私たちはもっと捨て育てをやる必要がある」とも話していました。会場で私は涙を流してしまいました。私自身が行っていたことは教育ではなく、ただの押し付けだったのではないか。本当に必要なのは社長である私が一生懸命、全力投球で仕事に向き合う姿を見せることなのだ、と気づきました。

それを機に私は気が楽になり、社員に教育することをやめました。自己学習も強制しません。「学ぶ」は「まねぶ」何事もまずは真似ることから始まります。そして「研修」は「研ぎ、修める」本人が望むなら研修費は惜しみなく出す、というスタンスに変えました。伝わっているかどうかは分かりませんが笑。

 

 

Q5:今まででお金、時間、エネルギーなど何でもよいが自分のリソースを投下して最も価値のあったものは何だと思いますか?

立創業です!自己資金200万円で、そのうちの100万円はいろいろな方から出資していただきました。最初は有限会社として始まりました。

 

 

Q6:自分の中でくだらないけれどなぜか止められないクセや習慣はありますか?

ベントを主催することです笑。

自分が考えたイベントの中で1番大きかったものは「ふるさときゃらばん」の主宰公演です。40歳過ぎに500万円をかけてミュージカルを主宰しました。当時は釜川にポスターも貼りました。松下幸之助氏が提唱したPHP運動というものがあります。これは「繁栄によって平和と幸福を」という理念を実現するための活動を指します。私もそれに倣ってビラを配ることから始め、なんとかイベントを実現することができました。そこで得た収益の100万円は宇都宮市に寄附しました。元々、そういう趣旨で立ち上げた企画でした。株式会社システムソリューションセンターとちぎ(SSCT)に転職した直後、2回目のミュージカル主宰を行いましたが、こちらは失敗しました。2回目は皆さんの意見を取り入れて指定席をはじめ価格が安い席を作るなどしましたがその結果、100万円の赤字となってしまいました。義理と人情で買ってもらったチケットだったので、売れた枚数こそ前回と同じでしたが、ほとんどのお客様が安い席に流れてしまいました。

他にも紅茶の街・宇都宮で紅茶味のクラフトビールを醸造・販売し、街を盛り上げるイベント「オリオンdeビアンティフェスwithオリスク酒造+ミヤラジ」も企画しました。今年の8月には「神田昌味がふるさと宇都宮で二宮金次郎を語る講談の集い」というイベントを主催します。ぜひお越しください。

主催するだけでなく、ゼロイチが好きです。商売は上手いかといえば、上手くない気もします笑。イベントの収益はほとんど出せていないのですが、街のために誰かのためになるだろうという気持ちで関わっています。自分の思い描いたものが形になっていく嬉しさ、それと同時にイベントを企画する面白さや楽しさを感じています。本来であれば仕組みを作って、しっかり組織づくりした方が良いのかもしれません。今は老後の趣味や道楽、遊びが「イベント企画」になっています。

 

 

 

 

Q7:ここ数年であなたの人生をよりよくしてくれた新しい考え方や行動はありますか?

こ数年、私の人生をよりよくしてくれた新しい考え方が2つあります。ひとつはスピリチュアルケアとの出会いです。スピリチュアルケアとは人が病気や死、喪失など人生の危機に直面した時に生まれる「生きる意味」や「存在の価値」に関わる苦しみに寄り添い、支えるケアのことです。

私は2020年に妻を亡くしました。患者本人が受けるケアは「ターミナルケア」と呼ばれます。これは治癒が難しい病気の末期(終末期)に対して行うケア(医療・看護・介護)のことを指します。一方、家族に対しては「グリーフケア」というものがあります。これは大切な人を亡くしたことによる深い悲しみに対して行う心のケアや支援を指します。その過程で「オープンダイアログ」という対話の方法を知りました。オープンダイアログはフィンランド発祥の対話を重視した支援法で、精神的危機や人間関係の問題に対し、本人・家族・支援者らが対等に語り合う場を持つことで回復を促す方法です。即時対応・継続的な対話・沈黙を含む自由な表現が特徴で、答えを押しつけず「あなたの中の答え」を大切にします。医療・福祉・教育・グリーフケアなどは様々な現場で幅広く活用され、日本でも注目が高まっています。私は長くビジネスの世界にいたので「レポートトーク(情報のやり取り)」は得意でも「ラポートトーク(共感や心の交流)」が苦手だったことに気づかされました。家族を亡くした悲しみや死に直面している人との対話は正解がない世界です。けれどその中で大事なのは「あなたの中に答えがある。それを私に聞かせてほしい」と心から伝えることです。それ以来、私の中で人との対話の在り方が根本から変わった気がします。

もうひとつは二宮尊徳から得た学びです。この4〜5年はまさに「二宮尊徳漬け」の日々です。本や資料を読み、自分なりの二宮尊徳像が分かってきました。彼は単なる勤勉の象徴ではなく「自律した人間を育てる」ことに力を注いだ思想家だと思います。当時の江戸時代には「武家の論理」と「町人の論理」があり、武家の論理が上とされていました。しかし尊徳は「自分の頭で考え、現場で判断し、現実を見つめる」ことの大切さを説きました。まさに現代でいう「三現主義(現場・現実・現物)」のような視点です。そんな二宮尊徳の思想を多くの人に伝えることが今の自分の楽しみになっています。

 

 

Q8:これから新たな挑戦をしようとしている若者へ伝えておきたいアドバイスはありますか?あるいは他者からのアドバイスで無視した方が良いと思うものはありますか?

ドバイスに関しては【回答4】と同じです。一方で無視した方がいいアドバイスは、これとは反対の言葉です。「やってみないと分からない」そして「正しい指摘だけど間違えていることはある」です。

 

 

Q9:ここ数年で、うまくNOと言えるようになったこと(ビジネスでもプライベートでも)はありますか?断るコツはありますか?NOと言えるようになった結果、新たに気づいたことや役に立ったことはありますか?

会うべき時に出会うべき人に必ず出会います。焦る必要はありません。急ぐ必要もありません。必要な情報は必要な時に入ってきます。NOと言わなければいけない場面すら回ってこない人もいるし「やりたいのに」と思っているのに順番が回ってこない人もいます。一方で、やると決めたことに対しては安請け合いしない方がいいです。それは肝に銘じておこうと思っています。

 

 

Q10:行き詰まった時、考えがまとまらなかった時、集中力が途切れた時、どうしていますか? 

ず、寝ます。お陰様で私はいつでも寝られる人です。若い頃に瞑想をかじったこともあり、子どもの時から寝られました。瞑想は有効です。脳波計を付けて測定してα派が出ている時に瞑想をすることがポイントです。その結果、バイオフィードバックが分かるようになります。バイオフィードバックとは自分の身体の状態(生体反応)を機械などで「見える化」し、意識的にコントロールできるようにする技術や療法です。

目を閉じて深呼吸をすることが大事です。この他にも街ゼミで学んだマインドフルネスや呼吸法、お笑いやヨガも取り入れています。

 

 

Q11:サルバドールされたアートや芸術はありますか?単純に好きなアートや芸術でも構いません。 

は元々、音楽が好きで特に「すずめのティアーズ」のような民謡調のハーモニーに心惹かれます。好きな音楽を紹介したいという気持ちと自分のボケ防止を兼ねて、月に一度ミヤラジで番組を続けているのも、そういう理由があるからです。「これはいいな」と感じた曲を自分で買って持ち込み、ラジオで流してもらうのがささやかな楽しみです。

芸術という部分でいえば妻にその才能があり、息子は漫画家になりました。しかし、自分自身はアートにはそれほど縁がないと感じています。ただ、書道には魅力を感じていて月に一度、書道教室に通って書に親しみ、雑談を楽しむ時間を設けています。また栃木市の美術館などにも足を運び、芸術に触れる機会も大切にしています。音楽と書のある日常、それが今の自分の豊かさを支えているように思います。

 

 

Q12:人生のターニングポイントにおいて、あなたに大きな影響を与えた人物は誰ですか?(有名人でも誰でも構いません)または誰にサルバドールされましたか?そして誰をサルバドールしたいですか?

生のターニングポイントにおいて最も影響を受けた人物は、やはりカミさんです。2020年にカミさんが亡くなって、改めて人生を反芻する中で「今の自分があるのは、すべてカミさんのおかげだ」としみじみ感じています。そういう意味では私にとってカミさんは観音様のような存在でした。20年ほど前、瀬戸内寂聴さんの青空説法を聞きに行き、その時から彼女のことを「カミさん」と呼ぶようになりました。というのも、プロゴルファーの青木功さんが自分の妻のことを「神(カミ)さん」と呼んでいたのが印象的で「僕にとっても彼女は神様のような存在だ」と思ったのがきっかけです。その想いはカミさんが生きているうちに伝えましたが、返ってきた言葉は「ふーん」でした笑。

今はご縁があった人と楽しく過ごすことを大事にしています。イベントを主催するのも、誰かと語り合うのも「出会うべくして出会った人たちと、共に楽しむ」ことが、僕の生き方です。

経営 経営者 創業者

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