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- 2024/06/03
- サルバドールズ
月刊サルバドールズ #18
鹿島田 千帆/メディアプロデューサー
「無理だよ、と言われると逆に燃えてきます。」
Profile:
神奈川県横浜市出身。大学在学中にラジオ業界に入りフリーアナウンサーを経て、1993年にエフエム栃木に入社。開局からアナウンサー、ディレクター、プロデューサー、営業など、放送部長代理として様々な放送業務に携わる。在職中に「心地よい声の発声方法」を研究するため、国立宇都宮大学工学研究科に社会人大学院生として入学し、7年半の研究活動を経て、博士(音声工学)の学位を取得。以降、工学・医療の両面から声の研究に従事している。新しい働き方を模索する中で2020年12月31日エフエム栃木を退社し、Commuh Design Companyを創業、2023年5月10日に法人化し、Commuh Design合同会社を設立。
Q1:人生において大きな影響を受けた本はありますか?また、よく人にプレゼントする本はありますか?
スタンフォード大学で講義をしているクレイトン・クリスティセン氏の著書『イノベーション・オブ・ライフ』という本です。この本には幸せな人生を送るために「どのような考え方をすればよいか」が示されています。日経新聞か何かで見つけました。息子が大学生の時、コミュニケーションが難しい時期があったんです。そこで良い本を見つけた時は「この本を読んで」と本好きな息子に送っていました。息子が人生で悩んだ時期に読んでくれるかな…と。現在、息子は32歳になりました。
ケリー・マクゴニガル氏の著書『スタンフォードの自分を変える教室』も好きです。幸福学に関する本で、いかに幸せに生きるかについて書かれています。幸福学は面白いですね。本の中では神経学に関しても書かれています。若者向けの内容かもしれません。2冊とも幸せに関する本です。
ドロシー・ロー・ノルト氏の著書『子どもが育つ魔法の言葉』は子育てが終わった後に読みました。自身の子育てを振り返り「なんでこんな言葉をかけられなかったのか」と読んでから後悔しました。言葉がけで子どもがものすごく成長することを知りました。本の中には具体的な事例もけっこう載っています。孫がいるので、孫に言葉がけしようかなと思っています笑。
最近は時間が取れずあまり本が読めていないですね。SNSの本とか実務的な本ばかりになってしまいます笑。
Q2:ここ1年以内においてあなたの生活に最も良い影響を及ぼした1万円以内の買い物は何ですか?
1万円を超えていますが、iPadはすごいですね。iPad miniを使っています。これ1つで何でもできてしまいますね。あとスマホケースが便利です!これは3,000円くらいでした。スマホをすぐに取り出したいのに、カバンの中だと探すのが大変で購入しました。
あと靴のインソールが素晴らしいです。良いスニーカーを買ったのですが、ちょっとだけ合わなくて。スーパースポーツゼビオで購入したインソールを入れたら世界が変わりました。インソールを見直すと日常生活が幸せになります。
Q3:自分の中では失敗したと思った出来事が後の成功につながったことがありますか?具体的に教えてください。
失敗と思ったことがない人間なんです。子どもの頃、親に「お前にピアノを習わせたのは失敗だった」とよく言われました。当時はピアニストになるのが夢でした。高校に進学する頃には芸大の先生に習っていました。その時に厳しいピアノの世界を知り、先生が鬼と化しました。課題曲もすごく多くて、進学校だったこともあり、レッスンに付いていけなくなりました。最後は横浜駅でお腹が痛くなったと仮病を使い、有隣堂で本を読み、そのあとどうしようかなと考え、カフェに行きました。その結果、レッスン代の一部がメロンパフェになりました笑。
高校は神奈川県の進学校へ。最も過酷だった、バスケ部に入部。ピアノには最も向かないスポーツですがチームプレーを学んだことが今の仕事に生かされていると思います。そこでピアノ人生は諦めました。親からはだいぶ叱られましたね。でも音楽を学んできたことがアナウンサーの仕事に生かされているのを後から知ることになります。
大学の進学の時には悩んだ結果、文系の大学に進学しましたが、やりたいことも見つからず。バイトもしたことがなかったので、大学でバイトを始め、ウェイトレスをやりました。短時間で良いバイトがないかなと探し、ナレーターコンパニオンを見つけました。日給27,000円でした。その時にこういう世界があるのだと知りました。研修を受けたのですが、その時に研修してくださった先生が東京FMのパーソナリティーでした。ものすごくプロフェッショナルで、魅力的だと思いました。大学1、2年生の時にラジオの仕事があると知り、そこからナレーターコンパニオンの事務所に所属しました。オーディションを受けたらラジオ局に入ることができました。
Q4:よく思い出したり、人生の支えとなっていたりする言葉はありますか?ことわざや誰かの言葉、あるいは自分が考えたオリジナルな言葉でも構いません。
自分の会社の社是は「Life is an Adventure(人生は冒険)」です。この言葉はNHK連続テレビ小説「マッサン」の中に出てくるセリフで主人公の妻・エリーが言っていました。このドラマは広島の造り酒屋の跡取りである亀山政春(マッサン)と母国スコットランドを離れて来日した妻・エリーを中心に繰り広げられる物語です。数々の苦労を二人三脚で乗り越え、激動の時代をまっすぐ生き本物を求めて、ついに本場も認める国産ウイスキーを造り出した夫婦の奮闘記です。「人生は冒険である」って良い言葉だなと思いました。私の主人は飛び抜けたことをせず冒険はしない人です。結果的に私が冒険旅行に付き合わせてしまっていますが、主人も楽しんでくれていると思っています笑。
Q5:今まででお金、時間、エネルギーなど何でもよいが自分のリソースを投下して最も価値のあったものは何だと思いますか?
子育てです。また在職時代、宇都宮大学博士課程に進み、人の声の研究をしました。今まで情熱だけでやってきましたが、そこで論理的思考を学びました。物事を論理的に進めていく術を知り、さらに教授たち知識の深みにも驚きました。そこから学びの沼に入っていった感じです。学んでいく中で分からないことが生まれ、それを解決するためにまた学んでいくその過程が楽しいと思いました。現役の大学生だった頃は勉強をしなかったのに笑。卒業までに全部で6~7年かかりました。中には10年以上在籍している人もいます。
アナウンサーの世界は競争が激しいです。若さを重視しがちなところもあり、若い女性のアナウンサーがどんどん入ってきます。すぐにお払い箱になってしまうので、これはマズイと思いました。年齢を重ねると若い人に仕事をどんどん持っていかれてしまう。そこで話し方のスキル身に付け、それを伝えていきたいと思いました。学ぶことで何かが変わるかもしれないと考えたのです。今はリスキリングと言われていますが、当時は異端でした。「あの人、変じゃない?」と言われるようなことをやってきたのかもしれません。できるのであれば留学もしたいです。日本と違う文化で1年間くらい違うことをしてみたいですね。
Q6:自分の中でくだらないけれどなぜか止められないクセや習慣はありますか?
なかなか思いつかなかったのですが、ゆっくり休めないことかも笑。隙間時間を見つけて同時に何かをやってしまうタイプです。例えばテレビを見ながら髪の毛を乾かしてマニュキュアを塗るみたいな笑。時間が勿体無い気がして…時間が1番重要だと思っています。
Q7:ここ数年であなたの人生をよりよくしてくれた新しい考え方や行動はありますか?
お嫁さんとの付き合い方です。お嫁さんや息子、孫と良い関係を作るためにどうするのがベストなのかを考えた時、お嫁さんと一緒に仕事をしよう!と決めました。最初息子は心配していましたが、お嫁さんのビジネスウーマンとしての高いスキルと、弊社の仕事は場所を選ばないため、在宅で子育てしながらもできること、いくつかメリットが掛け合わさり、今ではいくつかの事業の制作、マーケティングをお願いしています。私の想像以上にポテンシャルが高く、責任感もあるため安心して任せています。息子のお嫁さんという以上に一人の女性としてリスペクトしています。
家族内経営ですが、実子ではないところが程よい距離感と緊張感があるため、私はこの方法は多くの方にお勧めしたいと思っています。
我々の年代になると住宅ローンも終わり、余裕が出てきます。お嫁さんと事業をするのは良いと思いますね。お嫁さんのことも息子のことも客観的に見られるようになりました。
Q8:これから新たな挑戦をしようとしている若者へ伝えておきたいアドバイスはありますか?あるいは他者からのアドバイスで無視した方が良いと思うものはありますか?
「無理だよ」と言われたらチャンスと思った方が良いです。放送局時代にもけっこう言われていた言葉です。無理だよ、と言われると逆に燃えてきます。県域の放送局だとやはり県内の仕事が多いのですが、20年も続けているとやり尽くしてきます。
そんな時、競泳のオリンピック日本代表だった萩野公介選手のロンドン五輪壮行会の取材に行きました。結論から理由まできちんと話す姿を見て、彼はパーソナリティーに向いていると思いました。彼がまだ高校生だった3月、彼の周りの人たちから口説き落としていって最終的に萩野選手までたどり着くことができました。その際に平井先生の許可も取るように言われました。平井 伯昌(ひらい のりまさ)先生は水泳連盟の理事を務め、全日本のコーチとして指導を行っていました。北島康介選手をはじめとした多くの選手を育て、全日本水泳連盟の監督として素晴らしい実績を残した方です。平井先生の許可を得るため何回もメールしましたが、返事がありませんでした。なんとか連絡を取ることができた際に「萩野選手が良い時も悪い時もずっと取材します」と伝えたら取材OKをもらうことができました。そこから出張収録をして番組が始まりました。
みんなが「無理だ」と言うことは諦めなければ実現できるんです。2013年にバルセロナで行われた競泳の世界選手権を取材したいと思いました。そのことを上司に相談したら「無理だな」と言われました。そして「航空会社の協賛が付けば良いんじゃないか」とも言われました。そこで片っ端からいろいろな航空会社にアタックしました。その結果、ドバイを拠点とするエミレーツ航空が話を聞いてくれました。同社はちょうどドバイ経由バルセロナ便の就航開始のタイミングでした。「特番を作ります」と押して往復の航空券を出してもらいました。そのおかげで9日間スペイン取材ができました。諦めなければできると思いましたね。当時、会社にそんな人はいませんでした。その後も海外の番組をいくつか立ち上げ、萩野選手と7年くらい一緒に仕事をしました。萩野選手のキャリアの中でも最も好調だったバルセロナ世界選手権での試合を観ることができた、と思います。私もいくつかの民放のテレビに出演しました。
Q9:ここ数年で、うまくNOと言えるようになったこと(ビジネスでもプライベートでも)はありますか?断るコツはありますか?NOと言えるようになった結果、新たに気づいたことや役に立ったことはありますか?
放送局時代はすごくNOと言っていました。生放送はコンディションが大事なので、声が出なくなると番組に迷惑をかけてしまいます。今はNOと言わないですね。商売上とても大事なことです。飲み会も全部出席しています笑。現在コーディネーターを務めている栃木県よろず支援拠点から声がかかった時も忙しかったので迷いましたが、OKしました。言われた時に一旦受け入れるのが大事かなと思います。今の人はタイパを考えるのですぐに結論を出すことが多い気がします。NOというとその人の関係性も終わってしまいます。YESと言ってみることをお勧めします。
Q10:行き詰まった時、考えがまとまらなかった時、集中力が途切れた時、どうしていますか?
歩くこと、お風呂に入ること、寝ることですかね。思考が固まっている時は酸素不足なので、広がった空間に行くようにしています。働く場所も決めていて、スタバにはいつもお世話になっています。視界が開いているところで仕事をすると捗ります。湘南新宿ラインのグリーン車もおすすめです。熱海まで行って温泉に入るのもアリかな。
Q11:サルバドールされたアートや芸術はありますか?単純に好きなアートや芸術でも構いません。
絵画はあんまり見たことがないのですが、私の中の芸術といえばクラシック音楽です。特にショパンとリストには救われました。クラシック音楽は敷居が高いものではなく、日常に溢れています。これだけ長く馴染んでいるということは民謡のようなものかもしれませんね。自分で弾いたりもします。
Q12:人生のターニングポイントにおいて、あなたに大きな影響を与えた人物は誰ですか?(有名人でも誰でも構いません)または誰にサルバドールされましたか?そして誰をサルバドールしたいですか?
ターニングポイントは大学生の時です。マスコミの世界の知ろうと思い、ラジオの本場をこの目で見るためアメリカに3ヶ月に留学しました。ホームステイ先のお母さんのルイーズさんが、ラジオ局に連れて行ってくれました。この方が私をサルバドールしてくれました。もう90歳くらいです。
そして、息子とお嫁さんと孫ちゃんです。彼らが自分たちのやりたいことを実現できるようにばあばは頑張るつもりです。孫ちゃんのサポートもします。息子とお嫁さんも自分自身に投資して欲しいなと思います。夫は私と一緒にいることでアドベンチャーしているので、そういう面では夫のことをサルバドールしているかもしれません。逆に私がサルバドールされているのかも。
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